税務調査のお話
税務調査ってなんだろう?(2)~税務調査の流れ・ポイント・注意点


税理士の細井です。 
 
~税務調査ってなんだろう? パート1【税務調査とは?どんな法人が調査の対象になるのか?】~
 
の続きのお話です。
 
事業を行っていると、同業者や取引先などから「税務調査を受けた」と耳にすることはあっても、実際の調査内容までは知ることはないと思います。
 
密室で行われているイメージの税務調査ですが、どのような流れで行われているのでしょうか?
 
ここでは、税務調査手続きの流れと、実際の税務調査の場面において行われていること、ポイント・注意点について分かりやすく解説したいと思います。

税務調査の流れは?

税務調査手続きの流れは、以下の通り3段階となります。
 
(1)調査開始手続き・・・事前通知
(2)実地調査手続き・・・質問検査等
(3)調査終了手続き・・・是認、修正申告、更正決定
 
それぞれの段階での要点は次のとおりです。


(1)調査開始手続き・・・事前通知(税務調査の連絡)

原則として、調査対象となる納税義務者と税務代理人である税理士の双方に対して電話で調査の日程について事前通知があります。
 
事前通知事項の内容は次のとおりです。
 
・実地調査を行う旨
・実地調査の日時
・調査開始場所
・調査目的
・調査対象税目
・調査対象期間
・調査対象となる帳簿書類等
・調査対象となる納税義務者の氏名及び住所
・調査を行う調査官の氏名及び所属官署
・調査開始日時又は調査開始場所の変更
・事前通知事項以外の事項について非違が疑われることとなった場合に、当該事項に関し調査を行うことができる旨
 
これらの通知事項を確認し、事前準備をするための時間を考慮して調査の日程を調整するといいでしょう。
ただし、合理的な理由がないのに、ただ先送りにしたり、日程調整に応じないような非協力的な姿勢を取ると、調査官の印象が悪くなりますので注意しましょう。 
 


(2)実地調査手続き・・・質問検査等

日程調整した日時に、事前通知を受けた税目について実地調査が行われます。
 
質問検査等の対象となる帳簿書類等は、「法令の規定で備付け、記帳又は保存が義務付けられている帳簿書類」と「調査のため必要と認められる帳簿書類」とされています。
 
一般的な法人調査では、具体的に確認される書類として以下のようなものがあります。
 
〇一般帳簿
・総勘定元帳
・入金出金伝票・振替伝票
・現金出納帳
・預貯金の通帳
・売掛帳・買掛帳
・小切手等
・受取手形記入帳・支払手形記入帳
 
〇売上・仕入関連帳簿
・見積書
・注文書
・契約書
・納品書
・請求書
・領収書
 
〇経費関連帳簿
・請求書
・領収書
・業務日報
・経費精算書
 
〇固定資産・貯蔵品関連資料
・固定資産台帳
・棚卸表
・固定資産購入の際の稟議書等
 
〇人件費関連書類
・賃金台帳(一人別徴収簿)・扶養控除申告書等
・雇用契約書等
・タイムカード記録
・社会保険関係書類
・役員報酬改定や役員退職金を決議した議事録
 
〇会社概要説明資料
・会社案内
・会社組織図
・株主名簿

では、実際の調査の場面ではどのようなことが行われるのでしょうか?
 
中小企業の3~5年サイクルでの税務調査ですと、調査対象期間は3期分のことが多く、会社の規模にもよりますが、2日間で税務調査官は2名で行われることが多いと思います。
 
調査当日の流れは一般的に次のようになります。
 
(1日目 午前)
会社の代表者にも同席して頂き、会社の概要を説明して頂くことが多いです。
・事業を始めたきっかけ
・現在行っている事業とその業績
・業界全体の景気
・今後の会社の展望
・社長の出身地や個人的な趣味など・・・
 
※調査官は、社長との何気ない雑談の中にも、調査項目への伏線となるような話を盛り込んでいる場合があります。
 
なお、一通りご説明頂いたら、社長は退席していただいて構いません。よく質問されることですが、調査期間中、ずっと社長に同席して頂く必要はありません。
 
(1日目 午後)
じっくり帳簿書類のチェックが行われます。経理責任者に立ち会っていただき、調査官からの実務上の質問に対する回答や、求められた資料の提示などについて協力して頂きます。
必要に応じて提出物件の留置き(資料預かり)などに協力して頂く場合もあります。
 
(2日目 午前)
帳簿書類のチェック・質問・資料収集
 
(2日目 午後)
帳簿書類のチェック・質問・資料収集
16時に頃には、調査の総括が行われます。その場で修正申告等の可否が分かる場合もありますが、調査官が資料の原本やコピーを持ち帰り、後日連絡となる場合もあります。
 
※予定の2日間で調査が終わらない場合には、再度日程を調整して実地調査が行われる場合もあります。 
 


(3)調査終了手続き・・・是認、修正申告、更正決定(調査終了後の処理)

税務調査がどのような手続きで終了するのかは、調査の結果、①申告内容に誤りがない場合なのか、②申告内容に誤りが認められた場合なのかによって変わってきます。
 
①申告内容に誤りがない場合(申告内容の是認)
 
調査の結果、申告内容に問題がなかった場合には、「更正決定等をすべきと認められない旨の通知」(是認通知)が送付されて終了となります。
この通知は、申告内容は適正で問題なしというものです。ただし、調査後にあらたな非違事項を認識した場合には、再調査となる場合もあります。
また、小さな問題があった場合でも、修正申告に至らず指摘又は指導事項として調査を終了する場合もあります。

②申告内容に誤りが認められた場合
 
調査の結果、申告内容に更正決定等をすべきと認められる非違がある場合には、納税義務者にその内容の説明があります。
その説明を確認した納税義務者は、次のどちらかを選択することになります。
 
(選択1)修正申告書の提出をする
納税義務者が誤りを認めて正しい申告書を提出し直します。この場合には「不服申し立てをすることはできないが更正の請求をすることはできる旨の通知」が送付されて終了となります。
この通知は、「修正申告書は自主的な申告のため、後日異議申立ては出来ないですよ」という通知になります。なお、修正申告をした場合でも調査後にあらたな非違事項を認識した場合には、再調査になる場合もあります。
 
(選択2)修正申告書の提出をしない
税務署長より更正又は決定処分があります。
税務署長が調査により所得金額や税額等を決めることです。納税義務者は更正に不満がある場合は、異議申立てを行うことが可能です。
 
 
いかがですか?税務調査の流れはお分かりになりましたか?
 
なお、実地調査は数日間で終わりますが、事前準備から実地調査後の税務署とのやりとりまで考えると、終了までは1ヶ月くらいは要することになります。
 


税務調査における税理士の役割とは?

最後に、税務調査における税理士の役割についてお伝えしようと思います。
 
税理士は、税務代理の規定に基づく申告、申請、請求、不服申立てについて、納税者を代理できる唯一の存在です。
税務調査の立会いに際し、納税者の主張を補助及び代弁することができるのです。

では、税務調査に税理士に立ち会ってもらうメリットは何でしょうか?
 
それは、
(1)税務署との交渉を引き受けてもらえる
(2)追徴税のリスクを減らし、税負担が軽減できる
という点にあります。

(1)については、まず交渉に要する各種資料の整備など物理的な負担を軽減することができます。また、交渉のノウハウを持った税理士に立ち会ってもらうことで調査がスムーズに進むものです。
あなたは、税務調査に要する労力と時間を大幅に軽減することができるでしょう。

(2)については、会計・税務の専門家である税理士は、調査官の質問の意図をくみ、会社が行った会計処理の正当性(事業関連性など)を主張することができます。
あなたは、判断に迷うような回答を税理士に任せることで、会社で行った処理が適正なものであると代弁してもらい、調査官に認めてもらうことで、追徴課税のリスクを軽減することができます。

税務調査の対応には、日ごろからの会計帳簿の整備・確認が必須になってきます。
この機会に是非、顧問税理士の活用を検討されてみてはいかがでしょうか?
 


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